刑罰と犯罪抑止班:一般市民に対する世論調査によれば、人々は、凶悪犯罪に対して、厳罰化を求め、死刑を容認するものが増えているといわれている。しかし、これは人々の真意とは思えない。正しい情報を与えればどうなるかという観点と、調査方法と解釈に誤りがあるという観点の二点から精査したい。
また、このテーマは極めて古く、数十年前にも意識調査が実施されている。その調査票を再利用して、時代変化についても検討したい。
グループ代表
桐陰横浜大学 河合 幹雄
厳罰化と死刑の効果を信じる人々はどうすれば意見を変えるのか
河合 幹雄(桐蔭横浜大学)
葛野 尋之(一橋大学),木下 麻奈子(同志社大学),平山 真理(白鴎大学),久保 秀雄(京都産業大学),木村 正人(高千穂大学)
一般の人々の厳罰化傾向と死刑制度に対する支持の高まりは本物ではないという立場から,それを正す手段を探すことが本研究の目的である。理論的な側面からは,熟慮を重視する討議民主主義と呼ばれる考え方を検証する。討議民主主義とは,十分な情報を与えられた上で,十分な議論をし,熟考した上で結論を出すことこそが,本来の民主主義であるということ,および,討論によって人々の意識は大きく変化するという考え方である。厳罰化傾向と死刑制度に対する支持が,本物でない理由は,二つに分けられる。第一は,不十分な情報しか与えられないなかで熟慮を欠いた判断を,余儀なくされているという筋である。犯罪発生率は低下し,殺人など凶悪事件は大幅に減少していること,殺人事件とはどういうもので加害者はどういう人か,刑務所での処遇,出所後の暮らしぶりなどの情報も,一般人にはほとんど与えられていない。第二の筋は,世論調査の技術的未熟さにより,厳罰化傾向があるかのような結果を出してしまっていることである。質問の仕方を工夫するだけで,大いに異なった結果が表れることを実証したい。
河合 幹雄・葛野 尋之・木下 麻奈子・平山 真理・久保 秀雄・木村 正人 犯罪と刑罰についての知識と熟慮が意見を変えさせることの検証方法について -中間報告