インタビュー

鼎談2022.03.30

【第1回】鼎談(綿村英一郎 氏 × 羽渕由子 氏 × 滑田明暢 氏)

綿村英一郎(大阪大学 人間科学研究科 准教授)(写真中央)
2012年3月,東京大学大学院人文社会系研究科修了(同4月,博士)。慶應義塾大学で特別研究員(~14年3月),東京大学大学院で助教(~17年3月)を経て現職。量刑判断・司法制度に対する一般市民の心理など,法に関わる社会心理学が専門。法と心理学会第7期理事,第8期常任理事(研究企画担当)
羽渕由子(徳山大学〔4月より周南公立大学〕 福祉情報学部 教授)(写真左)
2005年3月,広島大学大学院 教育学研究科 博士後期課程修了(博士(学術))。産業技術総合研究所 特別研究員(~10年9月)を経て現職。外国人に対する司法面接の研究に従事。専門は言語心理学,認知心理学。法と心理学会第7期理事,第8期常任理事(広報担当)。
滑田明暢(静岡大学 大学教育センター 講師)(写真右)
2013年3月,立命館大学大学院文学研究科博士課程後期課程修了。博士(文学)。2018年より現職。夫婦間の家事分担の公平感やその変容過程についての研究に従事。専門は社会心理学。

※本鼎談は2021年9月24日にオンラインでおこなわれました。


学部生、大学院生の時に興味をもって取り組まれたこと

 

綿村 口火を切ったほうがいいと思うので話します。私は目撃証言の研究を当時していたんですけど。実は。ビデオを作るのに、泥棒が進入しているっていうシーンを作りたくて、うちの父親に泥棒役になってもらって、とことんいろいろこだわって。「泥棒はそんな感じじゃない」とか、「それじゃいい人に見えるから駄目だ」とか、そういう駄目出しを結構やったので、研究素材にすごくこだわったって覚えがあります。先生方、いかがですか。

 

羽渕 私は学部生のときには今のような研究ではなくて、外国からの児童生徒に対する教育をどうしたらいいだろうみたいなことをやっていました。あとは学生のときには私、少林寺拳法やってたんですけど、それで一生懸命・・・。

 

綿村 少林寺拳法やってたんですか。

 

羽渕 はい。いかに三段を取るかみたいな。

 

綿村 すごいですね。

 

羽渕 はい、頑張っておりました。

 

綿村 何段ですか?

 

羽渕 今五段なんですけど、学部から始めて三段までなら大体取れる。参座日数っていうのがあって、入門から何カ月かたたないと昇段できないっていうきまりがあるので、だから大学4年生で取れるのは、ゼロスタートだったら三段までっていうのが大体目安で。三段まで頑張って取るぞって言って練習をしておりました。

 

綿村 すごいですね。私、空手の黒帯なんですけど。

 

羽渕 そうなんですか。

 

綿村 この対談、格闘技の話にしますか、もう。滑田先生が格闘技やってたら。

 

羽渕 滑田先生、格闘技。柔道とかされてたらいいですよね。

 

滑田 そうですね、格闘技やってたらよかったですけど、私、球技のほうでした。

 

綿村 それは学生の頃ですか。

 

滑田 学生のときでした、大学の部活動でハンドボールをしてたので。学術半分、ハンドボール半分っていう形で銘打ってはいましたけども、結構気持ちの上ではハンドボールをやってたかなっていう気はします。

 

羽渕 なるほど。

 

綿村 ハンドボールは一時期すごい人気になりましたよね。

 

滑田 そうですね、数年前に、オリンピック出るか出ないかってところで注目はされてたんですけども。でも結局そのときには出れなくて、なかなかやっぱり、ちょっとメジャーにはなってないかなっていうところですね。

 

綿村 そのとき潮流に乗ってというか、そんな感じだったんですね。

 

滑田 そうですね。当時はやっときたなっていうところで、ハンドボール界も湧いてたんですけど。

 

綿村 時代が追い付いたって感じですか、そうすると。滑田先生に時代が追い付いた。

 

滑田 もちろん私じゃないですけど、時代が注目してくれたっていうのがそのときで。ちょうどスター選手というか、有名な選手がいたんで。

 

綿村 そうだったんですね。それはすごい。へえ。そっか。

 

滑田 そうですね。

 

羽渕 綿村先生はずっと学部のときからの興味を続けて、今まで来られたんですか。

 

綿村 違うんです、途中で研究飽きちゃって。

 

羽渕 ああ。

 

綿村 一般企業というか、役所に就職をして。やっぱり役所もなじめなくて、駄目だなと思って大学院に戻って来ちゃって、後で猛烈後悔みたいな。

 

羽渕 後悔っていうのは大学に戻ったのを後悔したんですか。それともいったん外に出たのを後悔したんですか。

 

綿村 どっちも後悔しました。結局どっちいっても後悔するっていうことだと思うんですけど。

 

羽渕 ああ。

 

綿村 大学院が後悔って言ってしまったらこの後の話が終わっちゃうので。

 

羽渕 でも多分、続けられてるっていうことは、こっちのほうがいいなって思われたんですよね。

 

綿村 そうですよね、相対的にはこっちのほうがよかったなと思ってるんですけど。そういうこと言っちゃったらしょうがないので、よかったっていうことにしておきます。

 

羽渕 大学院で戻ったときも学部のときの興味の研究をされたっていうことですかね。

 

綿村 いや、全く違うことを始めまして。ちょうど戻ったときが2007年ぐらいだったんですけど。裁判員裁判が始まるぐらいの。2009年なので。それぐらいに向けて研究してみたら面白いかもしれないと思いまして。今までは目撃証言研究してたんですけど、そこからちょっと変わって、一般人の罰の判断のほうに興味を変えて今にいたるんですけど。

 

羽渕 へえ。

 

綿村 ただ大学院時代は研究が4ぐらいで、子育てが6だったので。

 

羽渕 なるほど、もうそのときにはお子さんがいらした。

 

綿村 いたんです。

 

羽渕 早いです、早いっていうか・・・。

 

綿村 早くはないです、29の子なので。

 

羽渕 そうなんですか。なんかお若く見えるので。

 

綿村 そんなことないですよ。

 

羽渕 そうなんですね。へえ。そうだったんだ。そっか。

 

綿村 だからずっと子育ての合間に研究みたいな。

 

羽渕 へえ。でもなんかあれですね、イクメンパパの走りっていうか。

 

綿村 それも、時代が追い付いてきたなと思って。

 

羽渕 あ、なるほど。

 

綿村 ただ、まだまだ甘いなとは思いますけど。あんなもんじゃなくって、子育てのときには。もっと、いわゆる今、専業主婦の方がやってるようなことを基本はやってたので。

 

羽渕 じゃあ奥さまが働かれてたとか。

 

綿村 です。大学院も。そのときに確か滑田先生にもお会いした覚えが。大学院なってから。

 

滑田 そうですね、公正研究会を立ち上げようっていうときに、そこからご一緒させていただいてきたなと思います。

 

綿村 そうですね。

 

羽渕 じゃあ滑田先生もその頃からお知り合いというか。今の研究をされてたんですかね。

 

滑田 そうですね、そのときにちょうど、少し始めたっていうところでした。私も学部のときは全く違う研究をしてまして。お笑い番組でどういうときに笑いが起きるのかっていうのをひたすら観察をして記録をしてまとめるっていう研究を。

 

羽渕 へえ、なるほど。

 

滑田 してたんですけども。ちょうど大学院に入ったときに、『法と心理学のフロンティア』っていう書籍が出てたと思うんですよね。

 

綿村 ああ、あります。2冊組のやつですか。

 

滑田 そうです。その中の交渉研究だったと思うんですけど、交渉研究のチャプターを読んで、すごく面白いなって思ったんですよね。交渉のなかで、どこの辺りを落としどころにするのかみたいな。で、その落としどころに納得する、しないっていうのも人によって違うんだなっていうのがすごい面白くって、それで公正っていうテーマに関心を持っていったんです。

 それで、ちょうど大学院はイギリスのほうにも行ったんのですけれど、そこでは指導教官の先生の研究に関する修士論文を書くっていうのが一般的だったんです。そこで出会った指導教官のテーマが集団間関係で、差別とか偏見とかっていうところで研究されてたんですけども、なかなか日本でそのテーマでやっていくってなると、まだ切り込めないなっていうところもあったので、何とかできるものをって思ったときに、その先生は家事分担の研究もされていたので、じゃあ家事分担の公正感でやっていきましょうっていうところから、自分の今までやってきた研究、家事分担の研究が続いているというところですね。

 

綿村 何度か伺った覚えがあります。3家族ぐらいに、夫婦にいろんな質問をして、そのデータをまとめてらっしゃったのを覚えてます。

 

滑田 ありがとうございます。そうです、そこのところ、おそらくインタビューをし始めたところで、いろんな何人かの方にお伺いをして。最初は家事分担って一つのイメージというか、そんなにたくさんの形がないっていう勝手な思い込みがあったんですけど、でも実際にお話を伺ってると、本当にそれぞれの方の方法というか、スタイルがあるっていうことに気付いてきたっていうところもありました。

 

綿村 なるほど。いや、まだ覚えてます、いろいろ。

この次の話、そしたらいきますか?

 

羽渕 はい。

 

 

研究上の失敗談や成功談

 

綿村  研究上の失敗談や成功談。

これは私がさっき最初に話したので、羽渕先生いかがですか。

 

羽渕 研究上の失敗談、成功談。なんでしょうね、私は元は心理学専攻ではなかったんですけれども、大学院の時についた先生が心理学の先生で。心理言語学と言語心理学ってちょっと境界が曖昧で、その、実験をするというので心理学の先生について、実験心理学的なプライミング課題をするみたいな・・・。

 

綿村 プライミングされたんですか。

 

羽渕 はい。私は「外国人の子どもにどういう教育を」みたいなことからバイリンガル教育に興味を持って、それで第2言語習得の分野で2番目の言語を使うのに、どういうメカニズムで処理されるかみたいな話になっていって。それで習熟度別にどれくらい意味が活性化されるかっていうような研究で。初級の人は単語と単語の対連合なので、絵とか見せてもカテゴリー干渉の影響はあんまり受けないけど、習熟度が上がっていくとそういう干渉が増えていくとか、そういうようなことを。

 

綿村 すごく面白いですね、それ。

 

羽渕 そうなんです、面白くてやったんですけれども、すごくニッチなので。私、両生類みたいで、心理学系の学会に行ったら、あなた言語学の人でしょみたいな感じだし、言語学系の学会に行ったら、あなた心理の人でしょみたいな感じで、どこでもニッチというか。

 

綿村 マイノリティー。

 

羽渕 そうなんです、教育系の学会で発表しても分類が「その他」とか、(ポスターを貼るところも)すごい壁際で誰も来ないし。心理学系の学会でも(カテゴリーを)「認知」で出したら両脇がチンパンジーの研究で、向かいがハトの研究みたいな。

 

綿村 学習かなんかですか。

 

羽渕 そうですね、なんかそこに入れられて。「私、人間の研究なのになぁ」とか思って。動物セクションみたいなところに入れられて。周りの研究は、面白いし有名な先生方だから人だかりができていて。自分は売れないバーのママみたいに、こう、ずーっと立っていて、「切ないなぁ」と思いながらいました。まぁ、ニッチなのが武器でもあるんですけども、あんまり研究してる人がいないっていうので、珍しがられるんだけども主流になれないみたいなところがあって。その後、就職のときにもあんまりニーズがないっていうか。

 

綿村 ああ。

 

羽渕 はい、そうですね。就職先がないっていうような苦労があって。それで、私の場合はポスドクで1回研究所に行ったんですけど、そこでも、「うちは税金でやってるから外国人の研究はね・・・」みたいな感じでした。私がうまく自分の研究を説明できなかったっていうのもあるんですけど、そこでは“インターネット上での情報検索の仕方”といった違う研究をしたんです。それで、今の仕事に就いて、(新学術領域研究の)「法と人間科学」で1回合宿の募集があったんですよね。

 

綿村 ありましたね。秋田の研究合宿ですか。

 

羽渕 私は北大であったときに(行きました)。「この機会に言語関係の研究に戻ってやれ」と思って。ポスドクの時に研究所にいたんですけど、工学系の研究所だったので、ヒューマンコンピューターインタラクションみたいな方で生き延びてみようかなとか思ったんですけども、やっていてなかなか難しいなと思って。

「法と人間科学」では、コミュニケーションとか会話とかの研究を紹介されていたので、「ちょっとこれで戻れないかな」と思って参加して今に至るような感じです。なので、失敗成功というよりは、生き延びるので精一杯みたいな感じですかね。ニッチ研究ゆえに、苦労したっていう話です。

 

綿村 でもこの法と心理って、言い方悪いですけど、こういうニッチな人たちのるつぼというか。どこでも知り合いではない人たちが結構来てるような気はする。

 

羽渕 そう。その「法と人間科学」の時にも、分野自体が新しいから、大家の先生とかも研究をすごくされてるんだけれども、この分野は新しいからっていうことで、気持ちの上ではすごくフラットな感じでお話をさせていただくことができて、それがなんだか楽しかったんですよね。入りたての自分でも「こんなふうなのはどうですかね」とか言って。他の分野だったら、「もうそれはこういう研究があってね」とか「これ読んでから議論に参加して」みたいに言われそうなところがなかった。それで、楽しいなと。

 

綿村 そうですね、ほんとフラットですよね。ここは。

 

羽渕 そうですね。ただ実はそうでもなかったかもしれないって最近は思って・・・。

 

綿村 勝手にフラットと感じていただけかもしれない。

 

羽渕 かもしれない。法学論文とか、「ひぃ!」と思ったりしませんでしたか? 用語も表現も難しいし、ここからまたさらに法学の勉強するのってしんどいなとか思ってしまいました。

 

綿村 きっと同じ悩みを滑田先生も多分持たれてると。

 

羽渕 はい、お持ちかなと思って。

 

綿村 法学の勉強、どっかで滑田先生とかされましたか?

 

滑田 集中的に法学をっていうわけではないですけども、やっぱり勉強しようとかって思うと、「その先生方がどういうふうにご研究されてるのか」とか「(どういうふうに)考えられてるのか」とかっていうのは、やっぱり知る必要があるなとは思ってきました。

 

綿村 実際に勉強されましたか。

 

滑田 いや、多分、やってるかやってないかっていうと、やってない方に入ると思います。

 

綿村 そうですか。

 

滑田 難しいですね。

 

綿村 刑事訴訟法とかを結構読みはするんですけど、私は。途中でどうしても分かんなくなってしまって止まってしまうっていうの繰り返してたので、滑田先生がおっしゃってるみたいに途中で終わっているというか、そういう感じがしています。

 

滑田 そうですね。研究の中で判例を読むようになって、こういう形で裁判が行われて、いったんの結論を出すようにしてたんだなっていうのは。法の勉強ではないですけど、その世界の勉強っていうのは研究をする中でしてきたのかなっていう気はしました。(研究の中で)自然とそういう経験をしたっていうだけですけど。

 

綿村 同じです。私も主文の後のいろんな文章見ながらいろいろ考えますね、同じです。

 

滑田 そうですか。

 

羽渕 なんか失敗とかされましたか、綿村さんは。

 

綿村 私、失敗しかしてなくて。いつも本当にどれも失敗なように思うので。あ、明確な失敗はあります。こまごまとした失敗はたくさんあるんですけど、大きな失敗だなと思うのは、さっきの滑田先生との話にもちょっと絡んでくるんですけど、研究をやって実験をやって、結果が出た後になって、実はそういう実験のフレームワークが刑事裁判にないっていう。心理学者はそうやって考えてそのことをこういう、従属変数を測ると意味があると思ってるんですけど、実際の刑事裁判ではそういう手続きをあまりしないというか、それはもう既に決まっていて、あまりその辺りは調べてもしょうがないっていうことがあって。なので実験をやった後に、そういうものは現実にはないっていうことを、2回ぐらいなんですけど、せっかく研究にいろいろ投資して、お金も労力もいろいろ費やしたのに失敗したっていうことがよくあります。

 

羽渕 ああ。そういう場合って、心理学の結果としては出しちゃうんですか。それとも・・・。

 

綿村 結局お蔵入りになっちゃったのもありますけども、そこからやっぱり心理的な何かの法則性というか、そういうものに対するインプリケーションあると思うので。それをじゃあ出そうとすると、現実、例えば論文とか書いたりすると、そういうのはあんまりないとかいう批判になっちゃうのでなかなか、そこで終わってしまうっていうことがありました。

 

羽渕 なるほど。

 

綿村 難しいですね。

 

羽渕 そうですよね。滑田先生は失敗とかありますか。

 

滑田 そうですね、法と心理っていうところだと、失敗かどうか分からないですけど、やっぱり、その法の文脈とかその関連性を持った研究っていうのがなかなか今までできてないのかなっていうところはあります。それは実際に、自分のやろうとしてた研究は、特に大学院からの研究、公正感、家事分担っていうところだったので、なかなか法の枠組みとか文脈には乗らないっていうこともあったりして。合わせにいくものでもないとは思うんですけど、そのフィットするしないとかいうところで悩むというか、どう研究進めていくのかなっていうところで考えてたことはありますね。

 

綿村 ありがとうございます。なんか成功の話が出てこないですね。

 

羽渕 どうぞ、成功の話してください。

 

綿村 羽渕先生、何か成功は。逆にありますか。

 

羽渕 いや、すいません、本当に私、入って日が浅いので。学会に入れてもらったのが2014年とかだから、10年も経っていなくて。それで失敗っていうか、もともとプライミング実験みたいなことをやっていたので、剰余変数の多さに困っちゃっていて。今、いろいろ教えていただいて、司法面接で外国人からうまく話を聞く方法とかを実験に乗せてみたりしてるんですけれども、剰余変数が多過ぎて、インタビューも人によってバラバラに出てくるものをどういうふうにまとめるかっていう・・・。それに、実験室実験を強調してしまうとあんまり現場の人たちからは、興味ないなっていうようなことになってしまうし。

 

綿村 ああ。

 

羽渕 自分の知ってる手法で結果を出すっていうのが難しいので、どうやって出したらいいんだろうっていうところと、あとは現場のデータを使わせてもらう場合って、個人情報とか出せないものがあるし、どこら辺まではOKっていうさじ加減について自分もよく分かってないし、多分決まってないところもあったりして、だからその、綿村先生がおっしゃった失敗みたいに、一生懸命やったけど最終的に出せませんでしたっていうのが怖いなと思って。いろいろ調べているうちに私は踏み出せないことが多いっていうか。これも分からない、ああどうしようっていって始められないっていうようなことがあったりして。だから本当、こんな鼎談に呼んでもらっておこがましいというか、申し訳ない感じで。年は取ってるけど大して成果も出せていないので、さてどうしようっていうような感じです。

 

綿村 でもこうやって鼎談に呼んでいただけたのは、少なくとも多分3人に共通して成功なのかなって思ってるんですけど。ニッチ仲間だからおいでじゃないですけど。

 

羽渕 そうですかね。分からないですけど、はい。

 

綿村 私は仲先生にも、伊東先生とかそういった先生がたにおいでというか、いろいろとお話をさせていただいたりとかして、そういう大御所の先生とお話がたくさん聞けたのが自分の中では成功なので。

 

羽渕 ああ、なるほど。

 

綿村 本の中でしか知ったことがない、学部時代は本で読んだことしかない、へえ、そういう世界があるんだっていうのしか知らなかったような本を書かれている先生方と、直接お話しできたのがとてもよかったと思っています。今お話しながらふっと成功を思い出したんですけど、そう言われてみれば、偉い大御所の先生方や実務の先生方とお話ができたっていうこともあります。何年か前にシンポジウムをやらせていただいた時に、裁判官の先生や検察の先生、実務の先生方とお話しができたのが本当にありがたく思っています。本当はこんなふうにして考えてらっしゃるんだとか、こんなふうにして悩んでらっしゃるんだっていうのを知れたのがありがたかったです。こんなことしてるのって、この研究やってないと分かんないだろうなっていうのがよくあるので。そこは自分の中で、研究人生っていう中で見ると成功かなって思ったりしますけど、どうでしょうか。

 

羽渕 そうですね。私も研究プロジェクトに入れていただいた繋がりで、警察、検察や児童相談所の実務家の方からお話を聞く機会があって、それは多分研究室で実験をしている中では得られなかった関係性だなと思っております。

 

綿村 あ、それ貴重ですよね。

 

羽渕 はい。

 

綿村 滑田先生とかいかがですか。

 

滑田 今のお話を伺って思い出したのは、治療的司法の考え方とかっていうのは、自分自身では研究はしてないですけども、それに触れられたっていうのは新しい発見だったなと思います。公正に向けて、「皆でうまくいくようにやっていきましょう」っていう考え方がそこの前提、背景にあるような気がして。そういう考え方っていうのはすごく新鮮だったので、それは本当に、法と心理っていう中でいろいろとご研究とか実際のお話を伺う中で、新たに知れたことだなっていうふうに思いました。

 

綿村 幅広いですよね、本当に。今の滑田先生のお話と、刑事裁判でも、いわゆる加害者の側と被害者の側と、どっちの話も聞いたりとかするので。そういうのも片方しか知らないと見えない部分が、もう片方の話を聞いてるとまた全然違って見えてきたりするのがこの領域の奥深さというか。結局どうバランス取るんだろうってとこの難しさを肌で実感できるところはすごくいいなと思うんですけど。

 

羽渕 うん。なかなか期待が。私なんか本当にペーペーなんですけど、研究プロジェクトに入れていただいているというだけで問い合わせがあったりして。「分かりません」って言うのも謙虚だけど、期待に応えてあげたいなっていうとこもあったりして。だけどよく分かってないっていうところもあって。難しくないですか?「研究者」っていう漠然としたことですごく期待をされるっていうか。現場の人から「どうなんでしょう?」って聞かれて。研究者としては不確かなことは言えないけれども、でも向こうの期待には応えてあげたい。だけど、なんかあやふやで。「こうかもしれませんし、こうかもしれません」だと、こちらの信用も低下していくみたいなところがあって、そこら辺が難しいなと。

 

綿村 今おっしゃってるのって、私、今ちょうど1時間ぐらい前に事務方と相談してきたことなんですけど。取材が入って、でも自分のド専門ではなく、どう答えたらいいのかっていうところで。どうなんでしょうか、それこそニッチなので、ド専門のところにくれば自信持って答えればいいとは私は思ってるんですけど、周辺的なものとか、授業で教えてる内容であるとか、そういったことは一応はぐらかしてはいけないと思うんですけれど、一般的にはこう言われていますとか、こういう研究がありますっていう、ソースはこっちにあるっていう答え方をしていけばいいのかなと思っています。

 

羽渕 ああ、そうですよね。なんかその、最新(情報)を答えないといけないのではないかっていうような、多分私の勝手な、レベルを自分の中で上げてしまっている部分があるのかもしれない。他の全然関係ないニュースとかでも、専門家の意見って出ているのを見たりして、私の中では、「あれ、この先生より、聞くならこっちの先生なのにな」って思ったりとか、「書いてあることって最新ではないような気がする」と思ったりすることがあって、私は批判的なものの見方をする、ネガティブ思考の人間なので。そういうのがあるので、自分のところに(相談が)来たときにも「そう思われるんだろうな」と勝手に思ってしまうから、なんかすごい困っちゃうっていうか。

 

綿村 うーん。どうすればいいですかね。

 

羽渕 でも誠実に、自分のできる範囲内でお答えするっていうのがいいんだろうなとは思っていて。先方は多分それで満足しなければ他のところにいかれるので、それは向こうの判断と考えるようにしようと思っています。

 

綿村 いや、でもそれってなんかあれですよ。この次の話題の守秘義務とかガイドライン的なものだとか、そういうのにも関係してくるのかなと思ってて。

 

羽渕 ああ。

 

綿村 別にここに書いてあることだけじゃなくて、何か統一の答え方とか、統一の何かみたいなものって、やっぱりなきゃいけないんだろうなって思うんですよね、これ見てて。

法と心理学会でも、法と心理学会の、例えば事務局なりそういう受付があって、そこから専門のところに流してもらえれば、おっしゃっているような懸念はなくなると思いますし。

 

羽渕 はい。

 

綿村 本当はその学会の中で、今出ているような守秘義務とかに関しても、役割分担がなされていればすごくスムーズなのかなって思ったりします。

 

羽渕 はい。守秘義務がある案件で問い合わせがあったりするんですけれども、私、外国人に関わる研究をやっているので、日本語の先生から問い合わせがあったりします。「法と心理学会に入っているから法律のことに詳しいんだろう」みたいな勝手な思い込みで問い合わせがあったりするんですけれども、そういうのってどこまで・・・。例えば「こんな問い合わせがあったんですけど、どうやって答えたらいいんですか?」っていうのをすごく相談したいんです。けれども、どこまでを伏せたら守秘義務違反にならないのとかっていうのが全然分からなくて。

 そういうのって、学校のいじめ案件とか、多分、臨床系の心理学者の方って問い合わせとか相談を受けることが多いような気がします。そういうときに分からない場合でも、「私では分かりません」と答えるとすごく不親切な気がします。だけど「この先生(に相談したら)どうでしょう?」って、例えば「〇〇先生にどうぞ」って、(名前を出した)先生に面倒を押し付ける感じになってもよくないし、かと言って、「こんな相談があるんですけど、ご案内してよろしいでしょうか?」って心当たりのある先生に言っていいのかいけないのか。ぼんやりだといいのかもしれないんですけども。外国人関係の相談とか、知人の中でぐるぐる回ってたんですね。それで、相談内容はみんな知ってますみたいなことがあって、別の方向からも同じ問い合わせがきたりして。多分、相談という名の下に秘密のことがどんどんばらされているみたいなことになってるんだろうなと思って。これはちょっとよくないというか、そういう基準が分かっていればいいんだろうなと思いまして。

 持ち込まれる相談に対する守秘義務はどんなもので、自分が対応できないものについて他の先生に相談したりするときの相談の仕方とか、ここまでだったら開示していいよ、みたいなものが明らかになったら相談しやすいんですけど。多分、法学の領域ではすでにそういうガイドライン的なものが作られていそうな気がするので、教えていただければ有難いと思っています。

 

綿村 そうですね。

 

羽渕 ちょっと調べてみたら、民事裁判とかで看護師の人が重篤な病気のお子さんの病気を家で旦那さんに、「こんな人がいてね」ってしゃべったら、そのときには「言ったらあかんよ」とかって言うけど、人の口に戸は立てられないので、旦那さんが(どこかで)しゃべったのがどんどん近所の人に伝わって、「あなた不治の病なんだって」みたいな感じで(本人に)伝わってしまって、怒ったお母さんが訴訟を起こしたという裁判がありました。似たような感じで、研究者も相談をしているうちに重要な秘密が暴露されて、「どうしてくれるんだ」っていうようなことになったりするかもと思うと、なんにも言えないっていうか、誰にも相談できないっていうのがあって、踏み出せないなと思っています。

 

綿村 委員会などを作成してはどうかっていう案は、形としてはそういうのありなのかなって思いつつも、こういう相談ってすごくスピーディーに、誰が担当するかとか、そんなに中のいろんな決裁を経てやってくと、回答までにすごい時間かかっちゃうと思うんですよね。これ本当に個人的な意見なんですけど、守秘義務もガイドライン的なものって言っても、やっぱりこれは個別の時系にもよってくると思うので、あんまり組織的に何か大掛かりにやろうとすると、そっちに投げていろんな決裁があって、いやそうでもない、こうでもないっていう議論をやって、出てくるときには1カ月、2カ月たってるとか。じゃあそれは誰が取りまとめやるのかってことになってくるとすごく面倒な方向になってるので、あんまり現実味がないかなっていうのは個人的に思うんですけれど。基本的にはすぐにレスをしてくれるような、それこそslackではないんですけど、そういう仕組みの中で、「こんなんどうですかね」ですぐぱっと返事がきて、じゃあ誰々が答えるじゃないですけど、そういう、サッカーで言ったらそのまま直接来たボールをそのまま返すというか、そんな感じのパスワークでいかないと、もしこれに答えるとすると、できないとは私は思ったんですけど。滑田先生はいかがですか。

 

滑田 そうですね、やっぱり早くに返してもらったほうが、相談をしたいっていう思いでした人にとってはすごくいいなっていうふうには思いました。

 

綿村 そうですよね、本当に・・・。

 

滑田 早く返せれば問題ないですよね、きっと。返していいのかな、どうかなっていうのが、やっぱり判断が難しいっていうことなんだと思います。

 

羽渕 みんなが見る掲示板に「この案件が回答できる人いますか?」って出すのが一番いいと思うんですけども、そこで不特定多数っていうか、たくさんの人にどういうふうに出すかっていうのが難しい。まさか裁判中のこととか、その、いじめの案件のことを出すのは・・・。

 

綿村 それはまずいですね。

 

羽渕 うん。こんな相談があったんですけどって出すと、それこそ守秘義務違反。倫理的にもどうなんだって。

 

綿村 そういうことですね。それに、変にそれに答えてしまうと誰かの仕事を奪うことにならないかなと思って。

 

羽渕 そうですね。

 

綿村 あんまり樹立させてしまうとどうなんでしょうかね。いけないのかなって感じもするんですけど。

 

羽渕 そうですね。ある先生にご意見を伺ったところ、組織から依頼された場合には受けるけど、個人の場合には受けないっていうような、たくさん経験された中での経験値みたいなものがあるようです。やっぱり個人だと巻き込まれてしまう場合があったりとか、できれば救ってあげたいとか「手助けしてあげたい沼」に入り込んでしまうこともあったりして。だから本業は何だっていうようなことを考えていくと、個人からのものはお受けしないっていうようなことをおっしゃっていたりしていて。

 でもそういうのって分からないじゃないですか。最初に突然相談をされる、初めての経験の人にとっては、やっぱり困ってる人は助けてあげたいから力を尽くしてあげたいなって思うけども、結局、その弁護士さんの戦法と合ってない場合は、変に期待を持たせてしまうことになったりして。いろいろ情報提供しても弁護士さんは和解に持ち込みたいみたいなこととか、戦術があるのに、こういうのを調べて証明できたらいいっていうようなこと言うと、結局全体的に見るとあだになってしまうこともあったりするので。だから(もっと上の)専門家に聞いたほうがいいということもあるし、全体的に見るともっといい関わり方があるんであれば、それを知っていれば大やけどをしなくていいのかなと。

 

綿村 いや、ここで議論しても多分出ないんだろうな。

 

羽渕 そうですよね、すいません。自分が困っていることを他の人にも聞いてもらいたかったみたい。

 

綿村 でもまあ問題は共有できたのはすごくよいと思います。

 

羽渕 はい。

 

綿村 そうか、なるほど。

 

 

現在の興味・関心

 

綿村 現在の興味、関心についてですが、何か、滑田先生ありますか。現在の興味、関心。

 

滑田 そうですね、現在の興味、関心。自分で研究とか具体的な一歩を踏み出せるか分からないですけども、多分2年ぐらい前に法と心理学会研究の新たな広がりを考えるってワークショップ、多分綿村先生もご一緒させていただいたと思うんですけれども。

 

綿村 はい。

 

滑田 『Law and Human Behavior』誌を読んで、研究をレビューして、今後の展開を考えるって。

 

綿村 はい。

 

滑田 そういう企画があったと思うんです。そのときに自分が読んだ論文の中に、ハラスメント、特にその中でも性の多様性とか、セクシュアルハラスメントについての研究があって。それが実際に実証的に調査によって調べられてるっていうのが自分にとってはすごく新鮮で、それが結構何本か『Law and Human Behavior』誌に載ってるっていうことがあったので、実は一歩踏み出せばそういう実証的な研究ってできるのかなっていう思いを持ったので。そっから、じゃあ自分がそれをするのかどうかっていうのはまだまだ気持ちの整理というか、踏ん切りがついてないですけども、例えばその中で紹介された論文がしてたような、職場の中でどういうハラスメントが起きてるのかとか、どれぐらいの人がどう感じてるのかっていうのを調べる研究だったので、そういった研究もあるといいのかなとは思いつつ、まだ実際にできるかどうかは分かんないなって思ってるところです。

 

綿村 立命館大学の、この間オンライン研究会でちょうどその話が出ていて、ハラスメントの話が出ていたので、多分研究はされてるんじゃないのかなと思います。

 

滑田 私の勉強不足ですね。

 

綿村 羽渕先生は何かあれですか、研究関心、興味とか関心とかっておありですか。

 

羽渕 興味関心はいろいろとありますけど、先ほど、うちの大学は小さい大学なので、私、ハラスメント委員会の委員長とかも去年ふってきまして。ハラスメントについても。

 

綿村 なんかコラボができそうなお二人で。

 

羽渕 はい。はいっていうか、何て言うんでしょう、うちは小さい(大学な)ので、事案はみんな知ってるみたいなことになるのが難しいですね。相談する学生さんとかも、この人にも相談してるし、この人にも相談してるしっていうのでみんな知ってるし。担当者がある時間にいなくなると、「なんかあったのかな」みたいにみんなが注目して、ばればれっていうのがあったり。だから公的に相談窓口に上ってこないっていうのがあったりして、そこら辺が難しい。それと、専任がいないので、私も授業もだし研究もだし、どうしても専心的に相談窓口のことばかりに時間が割けなかったりして。今度、学内講演会で社会学がご専門のハラスメント窓口の先生に来てもらってお話をしてもらうようにはしてるんですけど、最終的に解決がうやむやになって終わるのが問題みたいです。

 

綿村 よくあるみたいですよね。

 

羽渕 はい。だから難しいなと思って。応用研究って解がぼんやりしてるし、扱いも難しいなと思っているところです。

滑田先生、ハラスメントとかは論文にしづらくないですか。

 

滑田 そうですね、なんか難しそうだなってすごく思ってます。その中で、ああ、こういう研究できるんだなって思ったのが、その『Law and Human Behavior』誌に載ってるものでした。ただその(論文も)実態について尋ねた質問紙調査だったので、(個別の事例に)深く切り込んだ研究ってなるとイメージができないっていうのが本音です。

 

羽渕 法的っていうか、学校のルールとかで、例えば減俸とか、学生の場合には停学になったりしますが、社会的制裁のほうがきつかったりとかなかったりとかして、そこら辺も難しいなと思うんですけど。多分大事になったら教職員だったら辞めるしかなくなるみたいなのがあったり、どうなんでしょう。それでも家庭のために仕事を続ける方もいらっしゃったりするとは思うんですけども、なんか。すいません。

 

滑田 いや、そうですよね。私まだ、すごく近くで接したことはないんですね。なので実際は、例えば大学のニュースというかお知らせを聞いて、そういうことがあったんだなっていうのを知るぐらいです。ただその中でそれぞれの当事者間の主張の食い違いであったり、お互いのどっちが正しいのかっていう中でのトラブルがあるっていうのは、言葉にできないですけど、本当に難しいことだなと思いました。でもそうですね、研究っていうところになるとなかなか難しいなっていうところで、実際としても本当に今のお話にあったみたいに答えが出ないというか、何がよかったんだろうかとかでしょうね。

 

羽渕 なんか落としどころが難しいなと思いました。

 

滑田 そうですね。あと、今の話で思い出したことというか、個人的に関心を持ってたことは、告発をするっていうことについて興味を持ってた時期があります。今もあるとは思うんですけど。

 

綿村 院生さんが研究やってます。

 

滑田 そうですか、えーと。

 

綿村 はい。内部告発の研究やってます、まあ院生が。

 

滑田 そうなんですね。

 

綿村 はい。また連絡します、そしたら。

 

滑田 はい、分かりました。私は何か知ってるとか専門知識があるとかっていうものではなく、ただ個人的に関心を持ったっていうだけなんですけど。(告発についていえば、)おそらく社会全体としてはある意味正しいことをされたんだと思うんですけども、実際それをしたっていうことが、その人当人にとってすごく利益になったのかどうかって思うと、やり切れない事例も以前、歴史をたどっていくとありそうだなって思うと、それをいいバランスで収める方法っていうのはないのかなっていうふうに思ってた時期はありました。はい。

 

綿村 じゃあ滑田先生に連絡するように院生に伝えてみます。

 

滑田 ありがとうございます。何ていうんでしょう、(研究を続けてきたわけではないので、)本当に、もちろん助言とかもできないですけれど。

 

綿村 いえ。その院生が考えてることは、内部告発者に対する周りの見方です。

 

滑田 ああ、はい。

 

綿村 周りが、仲間内のときには割とネガティブに見るけれども、外にいる人の場合にはポジティブに見るじゃないですけど、そういうことをいろいろ実験で、場面想定でやっているので。修論書いているんですけれども、見ていただければひょっとしたら修論生もいいアイデアが出るかもと思いました。

 

滑田 いや、それを実験に落とし込んでされてるっていうのは本当にすごいなと思います。

 

綿村 はい、面白そうな研究だなと思いました。お伝えします。

 

今後の抱負

 

綿村 今後の抱負。なんですかね。いろいろこういうのってありますけどね。すごく短期、中期的に見ればこういうものがあるけれども、長期的にはっていうのはありますよね。先生方、いかがですか。私一応、呼び水的に申し上げると、私はこの2、3年で考えてることは、今の研究を片付けて論文を出したいっていうのはあるんですけど。何か他の仕事でどうしても止まってしまったりするとなかなか動かないので、ちょっとまず今の研究を、科研でやってる研究とか共同でやってる研究をいったん片付けて論文化したいっていうのが短期的なもので。

 長期的には少しやっぱり、自分がもやもやっと抱えている、いろんなリサーチクエスチョンがあったんですけれども、それを一つの研究テーマとしてもう一回やってみたいなと思ってるところがあるんです。でもそれはすごくもやもやっとしてて、どういうアプローチでいったらいいのかが全然分からなくてですね。研究の多角化というか、なるべくこれからの将来見据えたときに、何とかニーズがなるべくあってってなってくると、あんまり今、目の前に転がってるような話ではなくて、もうちょっと先を見たときに必要になってくることって何だろうかとか、そういうテーマをもうちょっと自分の言葉できちんと形にできたら、で、それについて研究できたらいいなって。10年後ぐらいはそういうことを考えています。先生方、いかがですか。私はこんな感じです。

 

滑田 私も、成果というか、自分のやってきたこととか今やってることをうまく論文にしてまとめて公表したいっていうのは同じところですね。調査をしてまだ発表できてないのが本当にたくさんあるので、それを何とか出すっていうことと、出しながら自分の中にある、それこそ複雑でまとまらないものをしっかりと整理をしたいっていうのがまず、今、自分がしたいことです。

 

綿村 同じですね、なんとなく。羽渕先生、いかがですか。

 

羽渕 そうですね、私もいくつかデータは取ったけれど出せてないものは早く出したりしないといけないなと思っています。それで、その研究をもとに、こうやって聞きましょうっていうようなガイドラインとかプロトコルも、早く使えるものを出していくのが仕事かなと思って、できるだけ早くやらなければと思っています。

 

綿村 今、話しながらふっと思い出しました。明確に実は10年ぐらいでやりたいと思ってる研究が一つあって、児童虐待事件についての研究をしたいと思っていることに気付きました。これもやもやっとしてる部分じゃなくてはっきりしてる分なんですけど。とても今、実際には増えてなくて、どちらかと言うと報道が目立ってるような感じがするんですけど、やっぱり悲しい事件であることは間違いがないので。結果的に少なくなるように、自分の研究の駒をどこに置いたらいいのか分かんないですけど、そのことによってうまく児童虐待自体が減るように、そういう研究ができるようにって、そういえば今後の抱負、これははっきりとそういう疑問を持ちました。そうだ、はっきり。なんか法と心理が関わってる話って結構ニュースとか見てると本当にたくさんあるように思うんですよね。

 

羽渕 はい。

 

綿村 だからそれぞれ社会的な場面を切り取って研究すれば、それこそ本当に役に立つ研究ってたくさんあると思うんですけれど。もうちょっとだから盛んになるといいのかなって思って。なのでオンライン研究会やってるんですけど。

 

羽渕 ああ、はい。なんかオンライン研究会もすごく楽しいなと。

 

綿村 なかなか忙しくて、結構回せなくて。

 

羽渕 そうですか。それでもオンラインがない時代って多分、数カ月に1回とか学会のタイミングとかだったけど、結構1カ月に1回とか2カ月に1回とか。

 

綿村 そうなんですよね。

 

羽渕 本当に1時間ぐらいで終わっちゃうので、潔いなと思いながら参加しています。別の、ジェンダーに関するオンライン研究会に参加したときに、子育て中の女性研究者の方が登壇者で、30分だけ子どもを預けて発表30分、1時間で、「はい、さようなら」って閉会。すごく時間に厳しく、でもちゃんと回していらっしゃって。これまでエンドレスで研究会はするものみたいなステレオタイプがあったので、なんかちょっとびっくりして。でも、まあ、こういうのもありかなと思って。だから法と心理学会もすごくいい感じでオンライン研究会をされてるなと思って。

 

綿村 本当はああいうところを生かして、あんまり長い時間だと、参加者がその時間いられないっていう人もいるかもしれないので。何か授業の終わりの本当に小1時間というか、お風呂に入った後のビールを飲んでるときの1時間とか、そういう本当に短い時間でも長く続けばいいなと思ってるんですけど。ちょっと計画してかなかったのが、これをうまく回す仕組みを個人単位でやってたので、あんまり組織単位でやってなかったので、結局あんまり継続性がないというか。その人がやる気がなくなっちゃったらもうおしまいになっちゃうみたいな感じのところがあって。

 

羽渕 ああ。

 

綿村 私が今メインで回してるんですけど、私が忙しくなっちゃうとやっぱ回んなくなっちゃうので、何か本当はそういうのでうまく回せる仕組みがあると、すいません、ちょっと話遠くなっちゃうんですけど、そういう研究会を定期的にやっといて、それを多くの人がちょっと立ち寄るぐらいのことを繰り返しやってると連携が生まれやすくなるし、いろんなアイデアが出てくるのかなと思ってるんですけど。

 

羽渕 はい。Zoomのホストのアカウントを持ってるとやりやすいんですけど、うちの大学はTeamsなので、ちょっと開きにくいっていうのがありまして。学会(専用)のオンラインツールがあればよいですね。多分、管理が難しいと思うんですけど。

 

綿村 学会Zoom[1]があるといいですね。

 

羽渕 はい。だけど、パスワード等の管理とかが難しいんですかね。

 

綿村 そうですね。うーん。

 

羽渕 そういうこともあって、お引き受けできないみたいなことがあります。開いてもらって(ホストの)権限を移譲してもらうっていうのができないと、ちょっとできない感じなんですよね。

 

綿村 そうなんですよね。みんなにとってメリットあるはずなんですけどね、これ。

 

羽渕 そうですね。3人ぐらいで回していけば、負担はないのではないですかね。

 

綿村 そうですね。今度理事会があった時にでも話したりしていいのかもしれませんね。

 

羽渕 それはぜひ出したらいいんじゃないですかね。私も一番末席ですけど理事なので、出席しますし。多分今期だけだろうと思って、やりたいことは提案したいとは思っています。

 

綿村 そうですね。

 

羽渕 はい。なのでぜひ。

 

綿村 滑田先生もぜひ。

 

羽渕 ぜひ。

 

滑田 はい。どんな関わり方になるか分からないですけど。

 

綿村 お願いします。

 

滑田 はい。

 

羽渕 よろしくお願いします。

 

綿村 これで、すべてのトピックについてお話ししました。

本日はどうもありがとうございました。

 

滑田 ありがとうございました。

 

羽渕 ありがとうございました。

 


[1] 法と心理学会では、2022年1月からZoomを活用しています。

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