裁判員の判断過程班:裁判員による裁判は、スタートしてから3年が経とうとしています。おおむねうまく言っているようにも見えますが、やはり実際には多くの問題が存在し、時間をかけて解決していかなければならないことは、諸外国における陪審制の歴史を見ても明らかです。
私たちの班では、裁判員の判断にバイアスを与えるさまざまな認知的・社会的要因を科学的にあぶり出し、それらへの対処方法を提言することを目標として研究を行います。
グループ代表
慶應義塾大学 伊東 裕司
裁判員の判断過程に影響する情動的,認知的,および社会的影響に関する研究
伊東 裕司(慶應義塾大学)
裁判員の思考・判断はさまざまな要因によって影響を受けると考えられるが,それらの要因の中には,裁判員の判断を適切に方向づけるものもあれば,判断に好ましくないバイアスを与えるものもあるであろう。本研究では,裁判員の判断に好ましくないバイアスを与える認知的,および社会的要因について検討する。
研究は,裁判員の判断にバイアスを与える可能性のある要因を洗い出し,心理学実験を行いそれらの要因の影響や影響を除去する方法について検討し,その結果に基づいて裁判員制度の運用に関する具体的な提言をまとめる,という3つの段階を踏んで行う予定である。
第1の要因洗い出しの段階では,主として法律の専門家やその他の有識者,一般市民に対する聞き取り調査,質問紙調査を通して,次の段階で焦点を当てるべき要因を明らかにする。第2段階では,第1段階で浮かび上がった,裁判員の裁判を片寄らせる要因に焦点を当て,模擬裁判員実験を行う。第3段階では,裁判員に認知的,社会的バイアスを与えることが明らかになった要因について,法実務上の対応のあり方を心理学的観点,および法学的観点から検討し,裁判員制度の運用に関する具体的な提言の発信し,司法関係者や一般市民からのフィードバックを求める。
これらの3段階のサイクルを,場合によっては複数のサイクルを同時に動かしつつ,研究期間内に何度か繰り返す予定である。
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