みなさまへ
【報道】
科学鑑定の限界点語る 事件を例に京都で専門家シンポ
京都新聞 3月2日(月) 9時28分配信
【企画趣旨】
石塚伸一 (龍谷大学法科大学院教授・同大学院長)
アメリカの「イノセンス・プロジェクト」は、DNA鑑定を用いて、つぎつぎと無罪を証明し、200人以上の冤罪被害者を救済している。
日本でも、いまから四半世紀程前、科学警察研究所が独自に開発したMCT118 法というDNA 鑑定が全国の都道府県警で実用化され、裁判所において有罪判決の決定的な証拠とされた。しかし、かつて最新であったこの方式は、科学鑑定としては問題の多い臨床実験であることが明らかとなる。裁判実務でも「足利事件」や「東電女子社員殺害事件」において、犯人識別の誤りが露呈し、再審において無罪が確定した。死刑事件についても「袴田事件」では、DNA 鑑定が無罪を立証する重要な証拠となっている。
「和歌山カレー毒物混入事件」においては、SPring-8という最先端の大型放射光施設において凶器の毒物の「同一性識別」が行われ、有罪を立証する決定的な証拠とされた。しかし、ある時代に最先端とされた科学技術が、後に誤りであることが明らかになることは、科学の世界では決して稀ではない。
しかし、刑事裁判は、ときに人の生死を決する。果たして、未だ発展途上の科学技術に基づく実験結果を有罪証拠として利用してよいのだろうか。できるとすれば、そのためにはどのような前提とルールが必要なのであろう。
本シンポジウムでは、第1部において、毒物鑑定とDNA 鑑定の世界的権威であるお二人の科学者に日米の科学鑑定について語っていただく。第2部では、現在、再審請求裁判のみならず、分析化学の学界においても、アクチュアルな議論の対象となっている「和歌山カレー事件」の科学鑑定を検証し、鑑識科学と科学鑑定の現状と課題を明らかにする。最後に、これらの報告を踏まえ、あるべき科学鑑定の未来像について議論したいと思う。
【講演者紹介】
・杜 祖健(Anthony T. Tu)(コロラド州立大学名誉教授)
1930年台北生まれ。毒性学および生物兵器・化学兵器の専門家。台湾大学卒業後アメリカに渡り、スタンフォード大学、
イェール大学などで化学と生化学を研究し、ユタ州立大学で教授資格を取得、1967年からコロラド州立大学教授。
1998年同大学名誉教授。オウム真理教による「サリン事件」で日本の警察当局にサリンの分析方法を指導した。2009年
旭日中綬章受章。
・勝又 義直(名古屋大学名誉教授・元科学警察研究所所長)
1943年名古屋生まれ。名古屋大学で医学を学び、医学博士の学位を取得。スタンフォード大学留学を経て、名古屋大医
学部教授、同大医学部長を務めた。日本法医学会理事長(2003~06)、科学警察研究所所長を経て、現在、学校法人・
名古屋医専校長。日本のDNA型鑑定の第一人者である。
---プログラム---
【第1部】基調講演「科学鑑定の現状と課題」(13:10 ~ 14:45)
〔基調講演1〕
「アメリカの炭疽菌テロと日本のサリン事件における科学捜査方法」
杜 祖健 [Anthony T. Tu](コロラド州立大学名誉教授)
〔基調講演2〕
「DNA 型鑑定と日本の科学捜査」
勝又義直 (名古屋大学名誉教授・元科学警察研究所所長)
〔指定討論者のコメント〕
= 休憩=
【第2部】「和歌山カレー毒物混入事件における科学捜査」(15:00 ~ 16:40)
〔事件の概要〕 石塚伸一(龍谷大学法科大学院院長)
〔報告1〕「犯罪捜査における科学鑑定の役割」
丸茂義輝 (元科学警察研究所副所長)
〔報告2〕「分析化学と鑑定:
白鳥事件,ナイロンザイル事件,銑鉄一千万円事件,和歌山カレー事件」
河合 潤(京都大学工学研究科教授)
〔報告3〕「和歌山カレー事件における科学鑑定」
安田好弘 (第二東京弁護士会・和歌山カレー事件再審請求弁護団)
= 休憩=
【討 議】「あるべき科学鑑定を求めて」(16:50 ~ 17:50)
〔指定討論者〕井上嘉則(中部大学,日本分析化学会理事)ほか
***申し込み方法***
参加費無料・参加登録制(こちらの2枚目のお申込用紙でお申し込み下さい)
お問い合わせ:龍谷大学矯正:保護総合センター事務部
TEL: 075-645-2040 E-mail: kyosei-hogo@ad.ryukoku.ac.jp
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主催:文部科学省科学研究費助成事業・新学術領域〔研究領域提案型・法と人間科学〕
「犯罪者・非行少年処遇における人間科学的知見の活用に関する総合的研究」(研究代表・石塚伸 一)
( 研究課題番号23101011()2011~2015 年度)
共催:龍谷大学矯正・保護総合センター
後援:法と心理学会、龍谷大学法科大学院、龍谷大学法学部ほか/協賛:公社日本分析化学会ほか