裁判員制度の科学的検証のために

 本年5月から裁判員制度が実施されています。私たち法と心理学会の会員は、我が国の刑事司法制度に大きな変化をもたらすこの新しい制度に対して、大きな関心をもち、その施行以前に、法と心理学の観点から、この制度について多角的な研究を進めてきました。


 今後は、この制度がどのように運用されているかを科学的に検証することによって、常に制度を見直し、改善の努力をすることが大切であると、私たちは考えます。とりわけ、専門家である裁判官と、一般市民である裁判員の間で、充実した評議が円滑に行われているか、裁判員の意見が裁判に活かされているかを確かめることは、重要です。法律も、施行から3年後に制度を見直して、必要な修正をすることを求めています。


 しかし、現在の法律は、裁判員を経験した人々に、重い守秘義務を課しています。この守秘義務のため、研究者による学術調査の目的であっても、評議がどのように進められたかを経験者に具体的に質問することはできません。このような制約の下では、裁判員制度の科学的な検証とそれに基づく改善策の提案は、非常に困難です。


 私たちは、裁判員経験者に対するこのような重い守秘義務を緩和することによって、裁判員制度の現実の運用を知ることができるようにする法律改正を提案します。そのためには、守秘義務の対象となる事実をより狭くする、あるいは、一定の条件に合う研究者が学術目的で調査する場合に、一定の範囲で守秘義務を解除する、などの方法が考えられます。


  もちろん、学術調査の目的であっても、関係者の名誉やプライバシーを害してはなりません。裁判の公正を害するような介入が許されないのは、いうまでもありません。私たちは、このような調査研究を行う場合に、研究者が負うべき倫理的な責任も自覚しています。学会としても、研究者の倫理的責任の意識を強めるために活動します。そのうえで、裁判員制度の学術的研究のために、裁判員経験者の守秘義務を緩和することを提案します。

 

2009年10月24日
法と心理学会