法と心理学会大会発表賞
2021年 法と心理学会大会発表賞
第21回大会時の発表に関して、会員各位からの投票を募りましたところ、「心理学的知見を裁判官はどのように評価しているのか:刑事裁判判例の計量的研究」が最多投票を獲得し、これによりまして、ご報告者に大会発表賞を授与することが決定されました。
■ 受賞発表
題目: 心理学的知見を裁判官はどのように評価しているのか:刑事裁判判例の計量的研究
報告: 福島由衣(日本大学文理学部)・向井智哉(東京大学法学政治学研究科)・相澤育郎(立正大学法学部)・入山茂(東洋大学大学院社会学研究科)
概要: 近年、心理学者が証人の供述の信用性や被疑者の虚偽自白について実験や調査を行い、そこから得られた知見を裁判所に証拠として提出する機会が増えてきている。しかし、裁判所は心理学的知見に対して、必ずしも肯定的とはいえない。いくつかの有名事件でその証拠価値が認められなかったことから、心理学的知見に対する裁判所の信用は低いのだと指摘する研究者もいる。そこで本研究では、心理学的知見が利用された過去50件の刑事事件の判例を対象に、裁判所が心理学的知見に対してどのような判断を行っているか計量的な調査を行い、そのような指摘の妥当性を検討した。その結果、心理学的知見に対する裁判所の判断は、そのほとんどが否定的なものであったことと、その判断に付された理由は9種類に分類できることが示された。最も多かった理由は、心理学的知見を導くために用いられた方法論の不備に関するものであった。
これまでの受賞者
発表大会 | 受賞者 | 題目 |
---|---|---|
第21回 | 福島由衣(日本大学) 向井智哉(東京大学) 相澤育郎(立正大学) 入山茂(東洋大学) | 心理学的知見を裁判官はどのように評価しているのか:刑事裁判判例の計量的研究 |
第20回 | 平岡義博(立命館大学) | 科学鑑定の結果表現における鑑定者の心理 |
第19回 | 寺口司(大阪大学) 内田遼介(法政大学) 大工泰裕(大阪大学) | 体罰被害の規定因:体罰被害生徒数を用いた検討 |
第18回 | 山崎優子(立命館大学) 山田直子(関西学院大学) 指宿信(成城大学) 北村亮太(ボイストレーニング) | 取調手法によってもたらされる被告人への偏った印象はカメラアングルによって強化される |
第17回 | 山本聡(神奈川工科大学) | 日本人の主権者教育:契約・取引の社会と関係性・配慮の社会の比較を視点として |
第16回 | 徳永留美(立命館大学) 原菜帆(立命館大学) 篠田博之(立命館大学) | 目撃証言における修飾語を伴う「見た」とその確信度について |
第15回 | 村山綾(関西学院大学) 三浦麻子(関西学院大学) | 円滑な情報共有を促進する専門家-非専門家による評議手法の検討 |
〃 | 應治麻美(名古屋大学) 藤本亮(名古屋大学) 唐沢穣(名古屋大学) 藤田政博(関西大学) | Moral Judgmentと「ごまかし・不正」の心理 |
第14回 | 若林宏輔(立命館大学) | 評議構造の可視化:評議の人数比が評議構造に与える影響 |
第13回 | 大森馨子(神奈川大学) 五十嵐由夏(神奈川大学、首都大学東京) 和氣洋美(神奈川大学) 厳島行雄(日本大学) | 痴漢犯人はどこにいる?:立ち位置と左右手の観点から |
第12回 | 後安美紀(ATR知能ロボティクス研究所) | 想起する身体:消えたマイクロスリップをめぐる語りの心理・言語学的考察 |