法と心理学関連情報
法と心理学会 若手研究者奨励賞
2026年度 法と心理学会研究奨励賞受賞者発表
2026年5月19日(火)、研究企画委員4名による選考委員会を開催し、厳正なる審査を行いました。その結果、下記2名を本年度の研究奨励賞受賞者として決定いたしました。
受賞者の皆様に心よりお祝い申し上げますとともに、今後のさらなる研究の発展を期待いたします。
なお、本賞の副賞は7万円です。また、受賞者には以下の事項が求められます。
受賞後3年以内に、本賞受賞研究に関する成果を学会誌へ投稿、または学術大会において発表するよう努めること。
本賞受賞研究に関する経過報告や研究成果を公表する際には、本賞の受賞研究であることを明記すること。
複数人の顔写真の同時提示と視線が顔記憶に及ぼす影響
山本 知果(名古屋大学大学院情報学研究科 博士前期課程)
【研究紹介】
目撃証言に基づく顔記憶は、目撃時に喚起される情動や事後情報の影響を受けて歪みやすく、その正確性の検討は目撃証言の信頼性評価や誤認逮捕の防止に資する。特に、指名手配写真のように複数人の顔が同時に提示される状況では、時間内で複数人物を処理する必要から注意が分散し、記憶精度の低下や個々の顔の曖昧化が予測される。一方、視線は他者の注意や意図を示す社会的手がかりであり、直視は逸視に比べ符号化を促進し記憶に残りやすいことが知られているが、複数人提示という高負荷状況下での相互作用は十分検討されていない。そこで本研究では、指名手配犯の目撃証言を模した実験パラダイムを用い、学習時の顔提示枚数と視線を操作したうえで、顔記憶を意図しない状態で顔刺激に偶発的に接触する状況を再現し,記憶の正確性や虚記憶の生起について検討する。得られる知見は、指名手配写真の提示方法の改善や、捜査現場における人物同定の精度向上、誤認逮捕の低減といった実務的課題への応用が期待される。
【講評】
本研究計画は,指名手配犯の顔の記憶という新奇性があるテーマを目撃証言実験のパラダイムに落とし込み,実務的な課題解決に貢献しようとする点が評価され,目撃証言の実験研究の裾野を広げるものであるという期待が寄せられました。また,本研究計画が目指す実務的貢献は,法と心理学会が長年取り組んできた「何が目撃者記憶を妨害するのか,どうすれば正確性を担保できるのか」という社会的に重要なテーマと軌を一にするものであり,社会的意義の高い研究として評価されました。ただ、研究の目的・意義がやや拡散して見えるという指摘もありましたので、指名手配写真の提示方法改善に焦点を絞るなどすれば、研究の独創性がより際立つでしょう
カスタマーハラスメントにおける第三者認識尺度の開発と信頼性・妥当性の検討
辻 鼓二郎(愛媛大学大学院 修士課程)
【研究紹介】
近年,社会的課題として注目されるカスタマーハラスメント(以下,カスハラ)は,正当な苦情との境界が明確でなく,同一事案でも第三者によって判断が分かれやすい。こうした判断のばらつきは,被害の見逃しや矮小化,対応の遅れ,二次被害につながる可能性がある。しかし,従来の研究や既存尺度では,被害当事者の経験やその帰結の把握が中心であり,第三者の認識・判断は十分に検討されてこなかった。以上を踏まえ,本研究では第三者によるカスハラ該当性の判断,事案の深刻性・被害性の認知,被害者および加害顧客への責任帰属を測定する尺度を開発し,その信頼性・妥当性を検討する。先行研究や行政資料に基づく項目作成,専門家などによる内容妥当性の確認,一般就労者を対象とした調査および因子分析などを通じて尺度を整備する。第三者判断の個人差や偏りを可視化し,組織内での相談対応や研修,判断支援に資する基礎的知見の提供を目指す。
【講評】
本研究計画は,カスタマーハラスメント研究においてこれまでほとんど検討されてこなかった「第三者の認識・判断」に焦点を当て,尺度開発を通じてハラスメント行為を測定化しようとする点に独創性があります。単に新しい視点を提示するだけでなく,「判断の曖昧性が被害の見逃しや二次被害につながる」という現場の切実な課題を正面から扱っている点も評価されました。一方で,得られた知見を実務的な判断支援や組織内の運用へどのように接続していくかについては,今後の展開がさらに期待されます。厚生労働省によるカスタマーハラスメント対策方針の施行という時宜とも合致しており,社会的ニーズに即応しうる研究として,今後の発展が大いに見込まれます。
2025年度 法と心理学会 若手研究奨励賞受賞者のお知らせ
2025年度の若手研究奨励賞につきまして、厳正なる審査の結果
秋野 光城(立命館大学大学院 人間科学研究科)
田口 琳(立命館大学大学院 人間科学研究科)
LIU ZEYU(立命館大学大学院 人間科学研究科)
受賞者の皆様に心よりお祝い申し上げます。
なお、2026年度より新制度に基づく審査を実施し、受賞者を決
2026年度若手研究奨励賞の規約については下記を、また、実施
応募締切は2026年3月31日です。会員の皆様の積極的なご応
法と心理学会 若手研究者奨励賞について(2026年度~)
本学会では、若⼿研究者に研究活動を奨励する賞を授与します。本賞は、すでに完了した研究成果ではなく、これから実施される研究計画の⽴案および遂⾏を⽀援することを主たる⽬的とします。法と⼼理学研究またはこれらの関連分野において、学術的価値・社会的意義のある研究計画を有する若⼿研究者を本賞の対象としています。副賞の使途は⾃由で、領収書の提出も必要ありません。なお、本賞の副賞は、当該年度の予算の範囲内で、受賞者数に応じて適切に配分され、1 ⼈あたり概ね 5 万円〜10 万円となります。
※実施要領・申請書式
若手研究者奨励賞規約
(目的)
第一条 本規程は、法と心理学会(以下「当学会」という)において、当学会規約第四条第五項に定めるところにより行われる事業のうち、若手研究者の研究活動を奨励するための賞を授与する事業の実施に関して必要な事項を定める。
(名称)
第二条 本規程によって授与される賞は、「法と心理学会 若手研究奨励賞」(以下「本賞」という)と称する。
(頻度)
第三条 本賞の授与は、原則として一会計年度につき一回行う。
(受賞者の要件)
第四条 本賞を受賞できる者は、定職に就いていない40歳未満の当学会の会員で当該年度の会費を納入した者のうち、以下のいずれかに該当する者とする。
一 大学院修士課程に在学する者
二 大学院博士課程に在学する者
三 博士の学位取得または博士課程単位取得退学後10年以内の者
2 前項の定職とは、一定以上の期間にわたって何らかの組織の専任の職員または役員として定期に報酬が得られる職を言い、前項にいう「定職」とは、一定以上の期間にわたり、報酬を得て組織において専任の職務に就いている状態を指し、たとえば特別研究員、博士研究員、大学・企業等の専任職員(任期付を含む)、役員を含む。
(受賞者数の上限)
第五条 一会計年度内における本賞の受賞者数の上限は、常任理事会が定める。
(繰り返し受賞の禁止)
第六条 過去に本賞を受賞した者は、重ねて受賞することはできない。
(受賞要件の判定時期)
第七条 本賞の受賞に関する要件は以下の各号の時点で判定する。
一 年齢については、授賞年度の前年度3月31日時点で40歳未満であること(例:2026年10月授賞の場合は、2026年3月31日時点で40歳未満であること。)
二 受賞者が当学会の会員であることについては、授賞候補者が候補者となる意思を表示したとき及び本賞の受賞時
三 前二号に掲げられていない要件については、授賞候補者が候補者となる意思を表示したとき
(候補者の募集方法)
第八条 本賞の候補者は、当該年度において応募の意思を表示した者とする。
2 第四条の要件を満たす者は、申請書を研究企画委員会に提出することで候補者となる意思を表示できる。申請書に記載すべき事項については研究企画委員会が定める。
3 申請方法および申請受付期間は、当学会より適切な方法で会員に告知する。
(選考の方法)
第九条 研究企画委員会は、申請期間の終了後に選考委員会を組織する。
2 選考委員会は、研究企画担当の常任理事を委員長とし、研究企画担当理事より選出された4名の委員で構成する。
3 選考委員は、候補者との利害関係を有しない者とする。利害関係の具体的基準は別途定める。
4 選考委員会は、優れた研究計画を提出した候補者若干名を順位を付けて常任理事会に推薦することができる。
5 選考委員会は、適切な候補者がいない場合、「該当者なし」とすることができる。
6 選考委員会における推薦および順位決定は、委員の過半数によって行う。
7 選考委員会は、適切な時期に、推薦または「該当者なし」の意見を常任理事会に通知する。
8 常任理事会は、選考委員会の推薦・意見に基づいて受賞者を決定する。
9 決定内容は、理事会および総会に報告される。
(授賞時の交付物)
第十条 当学会は受賞者に対して以下を交付する。
一 本賞を受賞したことを証する書面
二 副賞
2 受賞者に対する交付は、電子的に行うことを妨げない。
3 副賞の金額および交付方法は、当該年度の予算および受賞者数に応じて、常任理事会が定める。
(受賞者の義務)
第十一条 受賞者は、授賞対象の研究計画について、3年以内に以下のいずれかの方法により成果を報告するよう努める。
一 当学会の学会誌への論文の投稿
二 当学会が主催する学術大会における個別報告、ワークショップ、またはシンポジウムでの話題提供
2 経過発表や成果の公表は、本賞受賞研究であることを明らかにした上で行う。
(改正)
第十二条 本規程の改正は、常任理事会の発議、理事会の承認を経て、総会での過半数による賛成をもって行う。
附則 本規程は、2021年10月24日より施行する。
本規程は、2025年11月 8日より施行する。





