可視化の制度構築と裁判員裁判班:通称「可視化班」です。可視化とは、ご存じのとおり「取調べの録音・録画」のことを言います。供述の任意性や信用性の判断を容易、適正におこなわせ、取調べの適法性を確保する目的から各国で進められています。我が国でも警察や検察で一部の録音録画が開始されましたので、裁判員時代に適切な制度設計や注意則、証拠としての取扱い方法について研究を進めていく予定です。言わば「ポスト可視化」に向けた研究です。
グループ代表
成城大学 指宿 信
取調録画と裁判員裁判-取調べ過程の可視化をめぐる制度構築と裁判員裁判への影響
指宿 信(成城大学)
山田 直子(関西学院大学),中島 宏(鹿児島大学),吉井 匡(香川大学)
安部 祥太(青山学院大学・日本学術振興会 特別研究員)
我々「可視化班」は,こんにちその導入と制度設計が大きな注目を集めている,いわゆる「取調べの可視化」,捜査段階(取り調べ)における録音録画の導入によって刑事裁判がどのような影響を受けるかについて,研究をおこなうものである。
研究内容としては,取調べの録音録画を導入している諸外国の見地に学びつつ,1)被疑者や被害者あるいは目撃証人等の取調べにおける自白・供述獲得プロセスと裁判員裁判における公判との関係,2)自白の任意性判断・供述の証拠能力判断と裁判員裁判の関係を踏まえ,取調べの可視化によって裁判の事実認定や証拠法のあり方がどのように変容すると考えられるか,そうした変容についていかなる法的対応を検討すべきか,を研究する。
「取調べの可視化」問題は,被疑者の取り調べを録音録画することで記録化を図り,違法な取り調べを抑止し供述の証拠能力判断(とりわけ自白の任意性判断) を容易にするためにその導入が議論されている。しかし,捜査段階において収集される「供述」は被疑者のそれに止まらない。第三者や共犯者らの参考人供述は最大の捜査の武器のひとつであるし,被害者や目撃者の供述も重要な証拠となる。いずれも言葉というきわめて不安定で非定型的な,そして主観的な表現に依存しており,しかもその獲得過程は捜査官とのコミュニケーションの中でおこなわれる。本研究チームは,供述の記録化という点に着目し,被疑者に止まらない,あらゆる供述プロセスを可視化することによって公判がいかなる影響を受けるのか,証拠法や立証方法において従来と異なる制度設計の必要はないのか等を検討し,「可視化」論を刑事司法制度全体の観点から包括的にデザインしようと試みるものである。
指宿ブログ http://imak.exblog.jp/
中島研究室 http://www.ls.kagoshima-u.ac.jp/staff/h-nakaji/
指宿 信 取調べとその可視化